2つのぬいぐるみ

誕生日当日の朝

「何とか出来るように頑張ってるから!」


ほとんど諦めていたから

そのメールだけでも、本当に嬉しくて

逢えなくてもいいかなって思えた程


夜19時を過ぎても、彼からの連絡がなくて

…無理しないで。大丈夫だから

そうメールを送ろうとした時、彼からの着信


「ごめんね!今から会社出るよ〜」


久しぶりに聞いた彼の声

本当に彼に逢えるんだ…

胸がいっぱいで、ドキドキして…



私にいたずらをするのが好きな彼


「待ち合わせ場所じゃなくて、駅にいるから、駅まで歩いてこれる?」


「うん!走っていくっ!」


カフェの扉を開けて

歩き出そうとした私の手を後ろから掴む彼


車に乗ろうとしたら、中から鍵をかけて

運転席からバイバイって手を振る彼


半泣き状態でいる私に

「はいっ!」と手を差し出して

手を繋いでくれて、何度も頭を撫でてくれた



「そらの好きなものを見に行こう!」


夜の海

綺麗な月と少しだけ光る星

少し先に見える街の灯り


「こういうの、そら、好きでしょ!」

得意げに笑う彼を見て、私も笑顔に



いつも通りの2人の時間

学生の頃の話、大好きな趣味の話、仕事の話…

ずっと楽しそうに話す彼


聞きたい事、話したい事

たくさんあったけれど…

もういいかな…そう思えて

ずっとずっと聴いて

彼を見つめながら

「うんうん、それで?」って話を聴いて



空に光る星を綺麗だね〜って見上げる私を

「そら〜 ぎゅ〜っ!」

そういいながら、抱きしめてくれた

…次の瞬間…

「ごめんね そら…」と暗い声…


えっ?なに?

…もう逢えないとか言われるの?

一気に不安になる私

声を絞り出すように彼に声を掛けた



「…どうしたの……」


「忙しくてプレゼント用意できなかった…

ずっと前に指輪をプレゼントするねって約束してたのに…ごめんね…」

「これ…お詫びのしるしっ!どっちがいい?」



彼の手のひらの上に

キーホルダーになっている

形だけが違う小さな猫ちゃんの

ぬいぐるみが2つ


迷って迷って…

「これっ!」

1つを手にとって眺めていたら


「お揃いね!持ち歩きできないけど、ここに掛けておくからね!」


そう言って運転席の脇にかけてくれました



彼とお揃いのぬいぐるみ

夢みたい…!

嬉しくて嬉しくて…

手のひらの上のぬいぐるみに頬ずりして

ちゅっ!としていたら


「ずるいっ!」


そう言って彼がキスをしてくれました


私の顔を覗き込んで

私の名前を何度も読んで

「大好きだよ」っていいながら

何度も何度も…



「帰りたくない…」



心の声を初めて口にした私を

何も言わず抱きしめてくれました



帰り道

「まだまだ忙しいから、1ケ月は確実に逢えないなぁ…」


そう言った彼に、

勇気を振り絞って…


「逢いたくて寂しくなったら、逢いたい!って逢えませんか?ってメールしてもいい?」


「いいよ!ダメなことが多いと思うけど、メールもなかなか返信できないけど…メールしてきていいよ♪」



胸に仕えていたものが解けて

涙がこぼれて

うつむく私の頭をぽんぽんとする彼




「大切な日に一緒いてくれてありがとう。

大好きです♡」


ありったけの想いを込めて彼にメール


…夜中に彼から


「逢えてよかった♪ 大好きだよ♡」



手のひらに猫ちゃんのぬいぐるみ

彼がくれたしあわせ

今までで、1番素敵な誕生日


ありがとう…

いつまでも、あなたのそばで笑顔でいたい



逢えなくても

声が聴けなくても

想いは一緒だよね


あなたの

優しい声

温かい手のひら

泣きたくなるくらい穏やかな腕の中


私の記憶の中で

ずっと抱きしめて待ってるから